それぞれの人生
先日、随分久しぶりに高校時代の同期生U君からの電話。こんど、そちらに行くので会おうという。
当日、これも同郷で偶然にも自分の家からそんなに遠くないところに住んでいた同期生F君の家に来ているので待っているとの事。
とりあえず住所を聞き、すぐにグーグルマップで確認してから出掛けた。
F君の奥さんは働いているようで、U君、F君が二人で待っていた・・・のはいいけれども、すでにアルコールが入ってデキアガッテイル状況。
テーブルには缶ビールの空き缶が何本も並び、ウイスキー瓶も載っており、とりとめのない話に付き合わされる。
懐かしさはあったけれども、酔った人特有のたわいのない話の堂々巡り・・・。
きっと明日になれば何を話したかさえも忘れてしまうんだろうなと思いながら長時間つきあう。
夕方になって外へでかけて腹ごしらえしたいと言い出したが、そのまま飲み続け実際にでかけるまでには1時間以上たっていた。
田舎から出て来た友人U君は、娘さんが2人市内に住んでいて、そこに泊まるのでどうせなら、その近くに行こうという。
すっかり運転手役になり、酔っぱらい二人を乗せて走り出すとU君がスマホ(なんと大型iPhone)を取り出して、娘さんと話している。その娘さんが近くの店(海鮮居酒屋)を調べてくれたらしい。
探してくれた店の名前と住所を聞き、駐車場の心配をしながら、ほどなくたどり着いてみると、すぐそばにコインパーキングがあった。
二人は海鮮居酒屋で飲み直し的な盛り上がりなのだが、こちらはアルコールをもともと受け付けないので食事をとることに。
だいたい、酔った二人はメニューから3人で選んで注文したものをあっと言う間に自分たちの腹の中へと送り込んでしまう有様。遠慮も気遣いもあったものではない。
話している最中に返事がないなと思い、見るとF君は眠りかけて体が揺れている。
起こしてあげて、そろそろ食事したらと勧めると「お前が食べた海鮮やきそばがうまそうだったから、それを食べる」と・・・。
午後にでかけて、二人をそれぞれ送り届けて自宅に帰り着いたときには午後11時半を過ぎていた。酔っぱらいの付き添いにでかけたようなものだった。
F君は途中から3人になったことも、外に出掛けた事さえ忘れてしまっているかもしれない。
毎日飲酒の習慣があるように言っていた。
田舎から出てきた友人U君は昨年、奥さんを壮絶な闘病生活ののちに亡くしていた。
早期退職後に家を新築したのだが、まもなく奥さんが発病したのだった。
訃報を知ったのは新聞のおくやみ欄で葬儀には間に合わなかったので、後に一筆書いて香典など送り、形ばかりの体裁を整えてあった。
その喪失感、孤独が痛いほどわかっていたので、短い時間ながら、辛さを忘れて過ごしてくれたらという思いで話を聞いていた。
U君が車の中からiPhoneで娘さんに、3人で食事をすると言ったら、娘さんはとても喜んでいたと言っていた。
田舎で早期退職して家を新築し、夫婦二人でこれからというときに奥さんを失っている。
その家で一人きりで暮らしているU君を娘さんが心配している気持ちは痛いほどわかる。
iPhoneも子供達がいつでも動静を把握できるようにと買ってくれた物だったらしい。
自分たちも、いつか通らねばならない道を彼は一歩先を行っているだけなので、もっと日常の生活ぶりや心境を聞きたかったけれども酔って、後に何も残らないような話をして楽しく一晩過ごす事も今の彼には必要なことに思えて、そのように付き合って時間を過ごしたという1日でした。
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by ksway | 2016-03-25 18:02 | 出来事