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灯りの消えた家

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この地に住んで45年になる。


大手商社が開発した建売の住宅団地。

500棟ほどが売り出され、端の方には大手スーパーも進出して当時としては満足すべき立地でありました。


自身まだ若く25年という銀行ローンの負担感は相当なものでしたがアパートの家賃を考えると無理しても買うべきだと思いました。


生まれたばかりの長女を連れ、3人で入居した時には手持ちのお金はほとんどありませんでした。

残った20万円ほどのお金を、定期預金にするとティシュペーパーをくれるとか、洗剤をくれるという銀行の広告にひかれて奥さんはA銀行に預け、半年もたたないうちに解約してB銀行に預けてという具合に、景品をもらうという貧乏生活でした。


当時、不動産屋さんに聞いたところでは一番若い購入者という事でした。


今、この住宅団地の高齢化が進んでいます。

近所を見ても、売却して引っ越して別の住民に入れ変わったり、夫婦の一方がなくなり、一人暮らしの方も多くいます。


当時は子供たちがたくさんいて道路で遊ぶものですから車で通るのが大変なほどでしたが、今、子供の姿を見ることはほとんどありませんし、人の姿を見ることも珍しいぐらいです。


向かいに5年ほど前に奥さんを亡くされて独り住まいのご主人が住んでいました。

個性の強い方でしたので付き合いはなかったのですが、ある日、前部中央に電柱にでも激しく衝突したような痕跡を残したご主人の車がレッカーされてきました。


この方はお子さんが一人(娘さん)おられて本州方面に住んでいると聞いておりましたが、その娘さんが来られて何か相談があったらしく、その後、ご主人の姿が見えなくなりました。


我が家のお隣の、町内の情報通の方が、認知症のためにご主人は施設に入ったようだとの事でした。


歳をとるというのは悲しい事です。

付き合いはなかったとしても、夜になっても灯りの消えたままの向かいの家を見ていますと寂しさを感じてしまいます。


いずれ自分たちの辿る姿をそこに見てしまうのです。


by ksway | 2023-11-23 11:30 | 出来事